建築士は時に「面白み」について考える。家を面白くする、暮らしを面白くする。こうすれば住まい手は楽しいのではないか、デザイン的に面白みがあるのではないか...と。そうして出来上がったデザインにお施主さんが共感し「こだわりある、面白いデザインの家」が完成する。しかしながらそれは時に暴走し、失敗することもあるのである。他の建築士さんが建てた家の見学会に行った際に、住まい手から「おしかりの言葉」をいただいたという建築士さんのエピソードもある。今回はそんな「面白み」に挑み「喜び」「失敗」を経験して家と向き合う建築士さんの作品から、スキップフロアについて聞いてみた。
スキップフロアという面白み
スキップフロアとは、各フロア(居室空間)が小さな階段で仕切られ、壁を持たせずに空間の仕切りを行う手法で、1階、1.5階、2階といった具合に、1階と2階の間にもう一つ階を持たせるような作りを言う。もちろん、1.5階だけでなく、1.3階、1.7階と1階と2階の間に2つの階を設けることも可能だ。しかしながら空間をうまく使おうとすると、1.5階程度にとどめておく方が使い勝手はよいと思う。スキップフロアをここ数年でよく見かけるようになったのは、建築雑誌の普及率が大幅に拡大したことが起因するが、実際にはずっと昔からスキップフロアの概念は建築業界の間ではあった。スキップフロアは住空間に目線の「高さの楽しみ」を与えることができ、その空間で暮らしをすることが楽しくなる演出である。もちろんここに機能性や快適性を追加することができたのであればなおよいだろう。
スキップフロアのメリット
スキップフロアは、通常の住空間の中に「目線の違い」による楽しみ方を与えることができる。例えば勉強や読書、音楽を聴くなどの時間をデスクで行うとしよう。この時、スキップフロアの1.5階の高さから1階を眺めながらやる場合と、ただ真っ白い壁に向かって行う場合とでは気分的に違ってくる。例えるのであれば、カフェで勉強しているような感覚を得られるだろう。もちろんそれが集中できるのかといえば別問題ではあるが、空間が楽しくなったことはお判りいただけるだろう。スキップフロアはただ狭い空間を広く奥行きある空間に変えるメリットがある。
スキップフロアのデメリット
スキップフロアが定着しないのには理由がある。暖房の効きが悪くなるのである。吹き抜けと同じで、1.5階と1階とを小さな階段で仕切っただけのこの空間は、まさに吹き抜けのある巨大居室なのである。そのため1階部分の熱は1.5階から2階へと流れていき、1階はなかなか温まらないのである。ただ昨今の断熱性能は格段に向上したため昔ほどそのデメリット差を感じなくはなってきていることだけは伝えておこう。そのほかにスキップフロアは若干の空間ロスを生じる。ただの居室であれば四角のルームを作ればよいのだが、スキップフロアにすることで各居室に階段のスペースが必要となり、階段の位置によっては家具などの配置がむつかしくなってくる。
スキップフロアを楽しむ
メリットもデメリットもあるスキップフロアだが、やはり暮らし方は楽しくなる。オフィスなどでも目線の高さが違うルームがあるだけで、ちょっとした開放的な気分になってくる。これはほんと不思議としか言いようがないが、ただ平坦なフロアよりも、上下に動きがあるフロアの方が心が躍るのだ。我が家も立て直す際には小さなスキップフロアは取り入れてみたい。あなたのご自宅にもいかがだろうか。