今回は居室の天井高について少しお話したいと思います。天井の高さはデザインや雰囲気を作るうえで重要な要素の一つです。例えば、美術館などのように作品を飾る場合に、その作品によっては低い天井高では作品の壮大さが伝わらなかったり、圧迫感で作品の魅力がうまく伝わらなかったりしてしまいます。また大人数が利用する集会場のような場所においても低い天井高では窮屈感を感じてしまうかもしれません。住宅の中でもそれは同じで、天井高の違いによって人に与える印象をコントロールします。特に日本家屋は茶室などの空間では、わざと入口を小さくしたり天井高を抑えたりすることでそれぞれの意図にそった空間を演出しています。
高い天井高
一般的な天井高は2400㎜でしたが、昨今では広めの居室で2700㎜程度の高さを有するものもあります。ただ単純に天井高を高くすれば気持ちが良いかというとそうではなく、狭い居室では高い天井高がかえって空間を間延びさせてしまいなんとも間抜けな空間になってしまいます。つまり用途・広さに応じた天井高というのがデザインの基本で、さらに施工性を考えると、規格サイズの2400mm~2700mmで空間を作るのが一般的となっています。
低い天井高
日本家屋では、「狭いところから広いところへ出ると開放的に感じる」などの感性から、玄関はあえて低く、居室では高くするというデザイン手法も用いられます。お城などの場合は別で、城内で刀が振れないようにわざと天井高を低く抑えるそうです。低いから古い家屋なのではなく、低くすることにも意味があるんですね。
天井の高さによるメリットやデメリット
天井の高さを変えることは、そのまま居室の体積を変えることにつながります。また壁面の面積も大きくなることで建材の費用が増加、工数の増加などがおこります。体積はそのままエアコンなどのランニングコストに影響します。高さのある天井の場合には照明器具にも注意が必要ですね。今ではLEDの照明が一般化しましたが、白熱電球だったころのW(ワット)数は今でも電球の明るさの目安として流通しています。一般的な2400mmの天井高の際に60W相当の明るさで十分だった場合、2700mmの天井高では、100W相当の明るさが必要になるかもしれません。明るさは距離によって影響を受けるので、そのあたりの計画も必要ですね。